オーストラリアの水球事情 Q&A


Q:オーストラリアの水球人口はどれくらいいるのか?
A:登録している人で8000人。Annual Reportに詳しく載っている。(ということで1998/1999年のデータを転載いたします。オーストラリアの人口が1900万人程であることを考えると多い。)

シニア男

シニア女

ジュニア男

ジュニア女

学校

フリッパボール

クィーンズランド

275

207

267

551

1300

ニューサウスウェールズ

1238

726

645

662

1135

161

4567

首都特別地域

101

56

41

55

253

ビクトリア

366

201

88

84

739

タスマニア

25

12

32

53

252

120

494

サウスオーストラリア

48

24

75

26

173

ウエスタンオーストラリア

443

224

118

102

887

ノーザンテリトリー

11

7

3

5

26

2507

1457

1269

1538

1387

281

8439

Q:国内ではどのような大会があるのか?
A:男子ではナショナルリーグが最大のイベントである。その他に各地域においてリーグがある。これには地域単位で組織されたクラブチームが参加している。ジュニアの大会の最大は州対抗。女子は、州対抗とクラブ対抗が最大の大会で、その他に地域リーグが行われている。

Q:どこの都市にどんな地域リーグがあり、どのような方式で試合が行われているのか?
A:各州都にはすべて地域リーグがあり、そこを中心に盛んに行われている。最も盛んなのはシドニーでシニア、ジュニア含めて400〜500人のプレーヤーが参加している。NTや砂漠地帯などにも存在している。試合形式はほとんどがリーグ戦形式で夏場(12月のクリスマス休暇を挟み10〜4月)を中心に、屋外でも温水プールのあるところでは、冬場も実施されている。

Q:ナショナルリーグ参加のクラブチームは、どのように組織されているのか?
A:チームは主にその地域や地元のプレーヤーとナショナルプレーヤーが加入して組織されるチームで、ヨーロッパでいうホームプールを持つクラブチーム(スポーツクラブ)とは少し異なる。選手はほとんどがアマチュア選手だが、ナショナルリーグには3人の外人登録(2人のゲーム出場)が認められており、フリーマントルにはサラリーをもらう選手もいる。ナショナルメンバーはリーグに参加している9チームにうまく分かれて所属するようになっている。選手の移籍はあるが、シーズン中には原則的に認められていない。シドニーには4チームのナショナルリーグ参加チームがあるが、メルボルンのVictorian Tigers、ブリスベンのBrisbane Barracuda、パースのPerth Torpedoはその地域での合併チームである。

Q:コーチングスタッフはどうか。
A:ほとんどのチームには、豪コーチングカウンシルの認めるLevel 2のコーチ、それからチームの遠征などを取りしきるマネージャがいる。コーチはプロではなく他に職を持っている。スタッフに関しては、遠征費のみで無報酬である。

Q:チームの運営面はどうか?
A:ナショナルリーグに新たに参加するためには30,000ドルの参加料が、さらに年間に5,000ドルが必要である。その他に、ナショナルリーグのレベルに見合う選手をシニア8〜9名、ジュニア5〜6名集める必要がある。また、国土の広いオーストラリアでリーグ戦に参加するためには、シドニーからだと西はパース、北はブリスベン、南はメルボルンやアデレードへ遠征する必要がある。それらの費用はチームが持つことになるので、スポンサー収入などの資金獲得が必要である。多いチームで10社、少ないチームで1社と格差がある。そのため年によっては参加を見合わせるチームもある。その他に試合の観戦料を2〜7ドルほど徴収している。

Q:練習環境はどうか?
A:クラブによっては、自分のプールを所有しているチームがあるが、ほとんどのチームのホームプールは公共のプールである。練習での使用料が1時間当たり30ドルぐらいである。豪のプールは屋外で数面あるところが多いので、独占使用になることは少ない。また、選手の勤務時間外や一般客利用時間を避けるために、練習は早朝では6〜8時、夜では8〜10時といった時間帯に利用することろが多い。

Q:ナショナルリーグへの外国チームの参加はどう思うか?
A:ここ数年、ニュージーランドナショナルチームが連続参加しており、今年は韓国ナショナルチームも参加した。外国チームに関しては、登録料はなしで参加してもらっており、日程も何度も往復する必要がないように調整を行った。オセアニア、アジア、アフリカ諸国にとっては、格差のありすぎるヨーロッパの強豪と対戦するよりも、おそらくレベルの近い豪クラブチームと対戦するのはとてもプラスになるのではないか。

Q:ナショナルチームの選手選考はどのように行われるか?
A:すべてヘッドコーチとコーチによって決定されている。ナショナルリーグはその重要な判断材料で、両氏は各地を回って選手をチェックしている。選手にとってはこの時がよいアピールの時である。また、ジュニア、シニアとも国際試合でのパフォーマンスは、大きな判断材料となる。

Q:ナショナルチームとしての練習はどこでどのくらい行われるのか?
A:ナショナルチームの拠点はキャンベラにあるAISにあり、そこに20数名のジュニア、シニアのナショナルプレーヤーが居住している。ナショナルリーグ中に、選手が各チームで練習する期間を除くと、ナショナルチームとしての海外遠征も含め、年間6〜8ヶ月行われる。

Q:AISで生活する選手の身分はどのようのものか?
A:選手の年齢は、20歳前後から30歳台まで広く、キャンベラ市内に職を持っているもの、市内の大学に通うものがほとんどである。ここで練習を行う選手は、AISのスカラーシップを受けており、このプログラムにより、選手は住居や進学、就職の斡旋に至るまでの援助を受けることができる。

Q:コーチングスタッフは何人いるか?
A:前述したAISには、ヘッドコーチ、コーチ、ドクター、フィジオセラピスト、トレーニングコーチ、マッサ−などが揃っている(ヘッドコーチとコーチ以外は他競技と併用)。遠征には、ヘッドコーチとコーチのほかに、マネージャー、ドクター、2〜3人のビデオ分析班が同行する。

Q:ヨーロッパ諸国との違いは?
A:利点としては、AISを拠点としていることでナショナルチームとしてのトレーニングが非常に長く行えることである。ヨーロッパの強豪国は各国に選手が散らばり、各国のリーグで戦っているので、ナショナルチームとしての練習が3ヶ月程しか行えない。これに比べ、オーストラリアは6ヶ月以上が可能である。欠点としては、強豪国がヨーロッパに固まっているので、それらの国に移動しての合宿やトーナメントに出場するのに、時間と費用がかかることである。イタリアなどはハンガリーまでほんの数時間で移動できるのである。

回答者:ダニエル・マースデン氏(Daniel A. Marsden)
現オーストラリアナショナルチームキャプテン。1970年生まれ(29歳)。1992年バルセロナ五輪代表。1993年のFINA World Cupでオーストラリアチームが銅メダルを獲得した時のメンバー。その他数々の国際大会に出場し、オールラウンドなプレーを発揮。1995年の福岡ユニバにも参加している。


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